かぶとたいぞうです。
私がいま住んでいるアパートの住人約50人は、私以外全員ファランです。
半数が英国人で残りの大半はオーストラリア人です。少数ですが米国人、カナダ人、ニュージーランド人もいます。アジア人は私だけです。
あえてファランばかりの村に飛び込んだのは、中庭のプールとヤシの木が気に入ったからです。そしていつも静かだからです。
私の英語
私は以前から英語を話せましたが、ヒアリングは苦手でした。だから以前は自分ばかり話して相手にはイエスかノーだけ答えてもらうような会話しかできませんでした。会話とは言えないですね。
今でもヒアリングは苦手です。特に英国人の英語は何を言っているのかさっぱり分かりません。
となりの部屋の英国老人
私のとなりの住人は英国の老人です。若い頃はトラック野郎だったそうで、話す言葉もあまり上品ではありません。
ある時、私がテラスでブログを書いていると、となりの英国老人がニコニコしながら私に近づいてきて、部屋の裏のほうを指差しながら「ピッキーニ」と言いました。太字で書いた「キー」がアクセントです。
ピッキーニ?
私たちのアパートの裏にはホテルがあり、部屋の裏窓からホテルのプールが見えるのです。
「ピッキーニ」が何を意味するのか分かりませんでしたが、英国老人はニコニコしています。
「ピック」という語幹から、ブタをイメージして私は自分の部屋の裏窓から裏のホテルのプールサイドを見ました。
ビキニ姿の若い女性
そこにはビキニ姿の若い女性がいました。
私が表側のテラスに戻ると、英国老人はすけべな顔で「ピッキーニ」「ピッキーニ」と連呼し、手でグラマーな女性の体を描くようなジェスチャーをしながら「ヤミー、ヤミー」とも言ってはしゃいでいました。
英国老人の「ピッキーニ」はビキニのことだったのです。
それ以来
それ以来、英国老人が「ピッキーニ」と言ってはしゃぐ度に一応裏のホテルを見に行きますが、見るほどでもない女性がビキニで泳いだりプールサイドで寝そべっているのです。
もし第三者が英国老人と私の会話を見たら、私がずいぶん英語の達人に見えるかもしれません。英国人の「ピッキーニ」が分かるのですから。
しかしそうではない
しかしそうではないのです。1年も一緒に暮らしたら、相手が何を言っているのか分かるのです。人間は同じことを何回も言います。特に年寄りはそうです。言い方のくせも分かるようになります。
つまり、特定の人と長くいると、相手の言っていることが分かるようになるのです。
赤ちゃんが母親の言葉を理解するようになるまでの過程と同じです。
日本人同士でも同じ
これは日本人同士でも同じです。何を言っているか分からない人の言葉でも、その人の奥さんは理解しているのです。いつも一緒にいるからです。
私がいつも行くローカル食堂でもそうです。ローカル食堂にくる常連にはファランもいますが、最初は何を言っているのかさっぱり分かりませんでした。それが今ではだいたい分かるのです。古い常連とは5年も付き合っていますから。
ハタから見ると英語の達人
ローカル食堂の常連とは下らない会話しかしていませんが、それをハタから見ている日本人客は私のことを英語の達人と思っているかもしれません。
でもそうではないのです。毎度同じ冗談を言って笑っているだけなのです。ピッキーニと同じレベルの話なのです。
ヒアリングなんてそんなものです。
パードン?
日本では一発で理解するように教えていますが、英国人同士でも、それほど仲良くない人たちが会話しているのを聞いていると「パードン?」「ソーリー?」の繰り返しです。
「パードン?」と聞き返す勇気
一発で理解する努力よりも「パードン?」と聞き返す勇気のほうがよっぽど大事だと私は思います。
そして同じ人と長く付き合えば、おのずと相手が何を言っているのか分かるようになるはずです。
それでいい
同時通訳でも目指している人でない限り、それでいいのではないでしょうか。
欧米人たちと一緒に暮らしている私が言うのですから、間違いないと思います。
ごきげんよう。
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著者かぶとたいぞう拝。
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