かぶとたいぞうです。
私が中学生の時、公民(社会科)の先生が言っていたことを思い出します。
公民の授業中に真顔でしみじみと言ったのです。
「今の年寄りはずるい。自分たちさえ良ければいいと思っている。自分たちさえ年金をがっぽりもらえれば、その後の若い人たちがどうなってもいいと考えている。君たち若者は年金をもらえなくなるかもしれない。これじゃ若い人がかわいそうだ」と。
先生は授業をそっちのけにして授業時間いっぱい年金の話をしました。
「これから話すことはテストにも出ないし受験にも関係ない。でも一番大事なことだからよく聞いてほしい」と前置きして、先生は話し始めました。
積立方式と賦課方式
「年金と言うものは、若い時に給料から天引きで引かれたお金を、歳をとってからもらえる仕組みだ。言わば老後の積み立てだ」
「今まで年金は『積立方式』と言って、自分で積み立てたぶんを定年後に自分でもらう仕組みだった。自分で積み立てたものを自分で使う。それでいいじゃないか」
「それなのに、年寄りが『順送りだ』と言い出した。今の若い人の給料から引いたものを年寄りがもらうと言うんだ。これを『賦課方式』と名付けた」
少子高齢化で年金財源が枯渇することは分かっていた
「だけど、授業でも習ったとおり、今の日本は少子高齢化に向かっている。人口構成がピラミッド型ではなく釣鐘型だ。先進国はみなそうだ。生まれてくる子供の数が少ない。特に日本は急激に少子高齢化に向かっている」
「賦課方式にしたら、今の年寄りはいっぱいもらえる。君たちの少し上に『団塊の世代』という人たちがいて人数が多い。ちょうど学校を卒業して社会に出て働き始めている。彼らがいっぱい稼ぐからだ」
「賦課方式にしたら、今の年寄りが一番もらえる。その後、団塊の世代のために君らが働く。そして君らが年金をもらうころにはきっと後が続かない。少子化でそのころには働き手が少なくなっているからだ」
当時の年寄りだけが得をする賦課方式
「少子高齢化に向かうことがはっきり分かっているのだから『順送りだ』なんて方便は成り立つはずがないのだ。若い人ほど損をすることがはっきり分かっているのだ」
「今の年寄りはそれを承知の上で『賦課方式』に変えようとしている。それもこっそりと」
「政治家も何も言わない。年寄りを敵に回したくないからだ。選挙で投票してもらいたいからだ。団塊の世代も自分たちまではもらえると思っているから特に反対はしていない。一番損をする君たち若者にはまだ選挙権がない」
「私は昨日、賦課方式反対のデモに参加してきた。学校の先生は公務員だからストとかデモには参加できない。でも参加してきた」
少子高齢化で若い人ほど損をする賦課方式
「先生ももうすぐ定年だ。年寄りの側だ。自分自身は賦課方式のほうがたくさん年金がもらえる。しかし教育者として今の年寄りだけがいい目を見て、君たち若者が浮かばれない制度には断固反対したい。昨日は君たちの代わりにデモ行進してきたのだ」
「君たちはまだ『年金』といってもピンとこないだろう。でもよーく覚えておいてくれ。君たちが60歳ぐらいになって年金をもらうころになると年金の財源が枯渇するだろう。大きな社会問題になるだろう。今の年寄りがたくさんもらい過ぎたからだ。そうなることが分かっていて今の年寄りが『順送りだ』などと言って自分らだけたくさんもらったからだ。今の年寄りがずるいからだ。君たちも自分の問題として意識を持ってほしい」
知らないうちに賦課方式に変えられた日本の年金制度
「私はこれからも賦課方式には断固反対する。でも年寄りも政府もずるい。きっと知らないうちに勝手に賦課方式にしてしまうだろう。最後まで阻止できなくて若いみんなには大変申し訳ないと思っている」と。
公民の先生、最後には真っ赤な顔をして話していました。クラスメイトはポカっと口をあけて聞いていましたが、私には何となく先生の言っていることが理解できました。そして先生の言葉をよく覚えておきました。
中学を卒業して10年くらい経ったころ同窓会があったので公民の先生の話を思い出して話題にしました。しかし出席者の中で年金の話を覚えている人は私以外に誰もいませんでした。やはりほとんどの人には関心のない話だったのでしょう。
本当に悪いのは現在100歳の年寄り
あれから45年。その時の「年寄り」は現在100歳を越えています。おおかたの人は充分な年金をもらって悠々自適な老後生活の後亡くなったと思います。
でもまだ鼻や喉にチューブを突っ込んで生きている人もたくさんいます。あり余る年金のおかげでいまだに生かされているのです。死んだら結構な金額の年金を失うので子息が必死に生かしているのです。
本当に悪いのは、現在生きていれば100歳~100歳越えの人たちなのです。
でも公民の先生も生きていれば現在95歳くらいだと思います。いい年寄りもいるのです。
公民の先生に感謝
先生は本当の「公民」を私に教えてくれました。正義というものを教えてくれました。私はこんな先生に学んだことを誇りに思っているし、先生との出会いに感謝しております。
先生、私は先生がおっしゃったことをしっかり覚えておりますよ。ほかのみんなが忘れても私は覚えていますよ。先生がおっしゃったとおり年金財源は枯渇しかかっていますが、先生が勇気を持っておっしゃったことを絶対無駄にはいたしません。
ごきげんよう。
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著者かぶとたいぞう拝。
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