かぶとたいぞうです。
今日はコロナに関わるお話ですが、暗い話ではありません。どちらかと言うと楽しい話です。
私はかつてラスベガスには10回ぐらいは行ったと思います。関与先の幹部研修や視察旅行の一環で、ラスベガスに同行したのです。
今日のお話は、そのラスベガスでの体験談です。
ラスベガスに売春婦はいない
若手の人たちとラスベガス旅行に行くと、必ずと言っていいほど夜の女性の話になります。
ラスベガスのあるネバタ州は売春の取締が特に厳しい州で有名です。ラスベガスには売春婦はいません。
それでも異国の女性との出会いを求めて、はるか隣の州までタクシーで1時間以上かけて行くツワモノもいるのです。タクシードライバーにはいい稼ぎです。
ラスベガスには本当に売春婦はいないのか
私は売春婦にはそれほど興味がありませんでした。しかし研修旅行のなか日で、とても暇な日がありました。あまりギャンブルをやらない私にはすることがありません。そこでラスベガスには本当に売春婦がいないのか調査してみたくなったのです。
こういうことはタクシーの運転手が詳しいと思い、適当な流しのタクシーを捕まえて車に乗り込みました。夜の9時頃でした。
街の事情通、タクシードライバーに聞いてみた
「ちょっと教えてほしいことがあります。メーターをたおして適当にこの辺を回ってくれませんか」とドライバーに言いました。
ドライバーは不思議な顔をしつつも、金になるならとメーターをたおして車を走らせました。私はドライバーに聞きました。
「ラスベガスには売春婦はいますか」
ドライバーは通り一遍の返事をしました。
「ネバタ州は売春の取締がとても厳しいので、売春宿はおろかストリートガールもいませんぜ」
なおもしつこく聞いてみたら
私はなおも聞きました。
「そうは言っても内緒でやっている人はいるでしょう?」
するとドライバーが言いました。
「噂ですけどね、あくまでも噂ですよ。ミラージュのメインバーに一人だけ客をとる女がいるらしいですぜ」
ビンゴ!
聞いてみるものです。
ミラージュのメインバーの売春婦の見分け方
「その女の人を見分けるにはどうしたらいいですか?」
「その女は『コロナを飲む女(Woman drinking Corona)』と言われています。ミラージュのメインバーのカウンターに座り、必ずコロナ(ビールの銘柄)を1本注文し、ボトルに口をつけてラッパ飲みするのです。それが彼女である証拠です」
私はワクワクしてきました。
ホテル・ミラージュへ突撃!
「このままミラージュに行ってください」
タクシーはホテル・ミラージュの正面玄関につきました。黒服がタクシーのドアを開いて迎い入れます。私はドライバーにメーターの料金の他にチップを50ドル渡しました。ドライバーはニカット笑って私に親指を立てて見せました。
タクシーを降りた私は黒服のドアボーイに聞きました。
ミラージュのメインバーはいずこ
「メインバーはどこですか?」
すると意外なことにドアボーイはこう答えました。
「当ホテルにはメインバーというものはございません。バーなら入ってすぐの右手と、奥の方にももう一軒ございます」
私は一瞬タクシードライバーにいっぱい食わされたかと思いましたが、諦めずに聞いてみました。
ドライバーのいう「メインバー」はどっちか?
「どっちのバーが大きいですか」
ドアボーイが答えました。
「大きさはどちらもそれほど変わりませんが、入口付近のバーは軽食向けのカジュアルなバーで、奥のほうのはお酒を飲むのに向いたムードのあるバーです」
私は奥の方だと確信しました。
ミラージュの奥にあったバー
ミラージュの一階の奥の方には確かにシックな雰囲気のバーがありました。大きくて立派な木のカウンターもありました。
「これだ、まちがいない」
私はカウンターの隅に座り適当なスコッチウイスキーを注文したあと、カウンターに座っている先客を観察しました。
先客は4、5人。しかし誰もコロナを飲んでいません。しかもカウンターに座っていた女性はたった一人で、老夫婦のカップルの一人です。こんなおばあちゃんが「コロナを飲む女」であるはずはありません。
「やっぱりいっぱい食わされたか。今ごろあのタクシードライバーは腹を抱えて笑っているかもしれない」
私はどうせすることもないし、そのバーのカウンターでそのままスコッチウイスキーを3杯4杯と飲み続けました。居心地のいいバーでした。
20歳代の茶色の髪の女性
酔いがかなりまわってきた頃、私の隣の隣の空いた席に20歳代の茶色の髪の女性が座りました。どうも1人のようです。
背はそれほど高くはありません。身長は160センチくらいだと思います。でも体の線は魅力的です。
彼女の前にコロナが出てきました。
「あ、コロナを飲む女は本当にいたんだ!」
感激です。
「コロナを飲む女」の人相風体
よく見ると「コロナを飲む女」はメキシコ人のようです。顔はそれほど美人顔ではありませんが、情熱的な横顔は男を誘うものがあります。
服装はいたってカジュアルです。きっと目立たないようにしているのでしょう。一般的な旅行者って感じの服装です。
タクシードライバーの話では、彼女にコロナをもう一本おごることにより契約が成立するらしいのです。
私は息を呑みました。
突然現れたヤサ男
するとその時、どこからともなくひょろっとしたイタリア人っぽいハゲのヤサ男が現れ、彼女に話しかけたのです。男はそのまま彼女の右隣に座り、バーテンダーに何やら指図しています。
おっと、コロナが出てきました。そしてヤサ男と乾杯です。
その後2人は2、3分ほど話していましたがふいに席を立ちました。価格交渉が成立したようです。2人はそのまま外に出ていきました。
私はその一部始終を横目で見ていましたが、気がつくと私の他にも何人かの男が2人の行動を見ていたようです。
時計を見ると夜の11:00でした。
本日第2ラウンドだったのか
そうか、コロナを飲む女は、今日2ラウンド目だったのだ。っという事は午前1時くらいにはまた戻ってくるかもしれない。
私は酔った勢いでバーテンダーを呼び、バーテンダーに小声で聞きました。
「コロナを飲む女は1時くらいにはまた戻ってくるでしょう?」
するとバーテンダーは言いました。
「コロナを飲む女ですって?そんな人は知りませんよ」
私はニコッと笑ってなおも聞きました。
「分かっているから。大丈夫だから。さっきあそこに座ってコロナを飲んでいた女性だよ」
するとバーテンダーは私の顔を注意深く観察した上で小声で言いました。
「どうですかねぇ。今日はもう戻って来ないかもしれませんよ」
ずっと秘密にしておいた話
私は飲み代とチップを渡して自分の泊まっているホテルに戻り、ひとり部屋で飲み直しました。そして一緒に来た日本人にはこのことを最後まで話しませんでした。あっという間に広がるのを恐れたからです。
それ以降もこの話はごく親しい親友にしか話しませんでした。
この物語はフィクッションではありません
この物語はフィクッションではありませんが、かなり昔の話なので今はどうかわかりません。
ごきげんよう。
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著者かぶとたいぞう拝。
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