かぶとたいぞうです。
山岳小説家の新田次郎の奥さんは藤原ていさんと言い、彼女もまた文章を書いています。
私が読んだのは「流れる星は生きている」というタイトルの書籍です。小説というより敗戦直後の満州引き上げの真実の体験談を綴った手記です。
藤原てい氏による満州引き上げのすさまじい真実の記録「流れる星は生きている」
日本が戦争に負けて日本軍が敗走するなか、藤原ていさんはたった一人で3人の子供を抱えて日本まで逃げ帰ってきたのです。体験談はとてもリアルで当時の真実を知るいい資料でもあります。
いい本なので一度お読みになることを強くおすすめします。
私も人に薦められて読んだ
私も10年くらい前に、ある人に「とにかく読んみろ」と強く薦められて読みました。そして読んだあとは良い本に出会えたことを感謝しました。
だからこのブログの読者にも強くおすすめするのです。
女性が残す文章には真実が書かれている
先日沖縄で訪問した「ひめゆりの塔資料館」に保存されていた当時のひめゆり隊の手記もそうでしたが、女性が残す文章には真実が書かれていると思います。
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男性はとかく他人に忖度したり遠慮して真実を隠す傾向がありますが、女性はストレートです。思ったとおり書きます。その中に真実を見つけることができるのです。
同じ日本人に一番ひどいことをされた
藤原ていさんも「流れる星は生きている」の中で、一緒に逃げてきた引き上げ隊の同じ日本人に一番ひどいことをされたと証言しています。
戦争というものはそういうものなのですね。女子供が一番苦労をするのです。
藤原てい氏の夫が新田次郎で、息子が藤原正彦
ちなみに藤原ていさんが命からがら守って日本に連れ帰った子供の一人が「国家の品格」を書いた数学者の藤原正彦で、その妹も小説家です。
新田次郎以下家族がみんな本を書いているのです。すごい一家です。
「みんなのため」に残った夫(新田次郎)
さて、その「流れる星は生きている」の中の最初の方に、次のような趣旨の記述があります。日本が負けて、日本軍が満州の住民を置き去りにして、いの一番に敗走し、住民が混乱して逃げ惑う場面です。
「夫(新田次郎)は私(藤原てい)に子供を連れて先に逃げろと言う。夫は他の住民の避難を助けなければならない立場(当時の新田次郎は満州の気象庁に務める公務員)にあるから、住民をおいて先に逃げるわけにはいかないと言う」
住民を置き去りにして敗走した軍人に比べてご主人(新田次郎)はみんなのことを考えていたのです。
藤原てい氏の言う「みんな」とは
ところがそれに続く文章の中で藤原ていさんは夫のことを次のように批判するのです。
「まったく男というものは、どうして自分のことしか考えないのか。どうしてもっとみんなのことを考えてくれないのか。夫は住民を助けることによって自分がいい人だと自己満足したいのだ。自分さえ良ければいいのだ。もっと私や子供たちみんなのことをどうして考えてくれないのか」
ここを読んではっと思いました。
男にとっての「みんな」と女にとっての「みんな」
“そうか、男にとって「みんなのため」とは「社会のため」、「多くの人のため」、「世の中のため」という意味だが、女にとっては「自分と子供たちのため」なのか”と思いました。
でもそれもまた真実なのです。顔も見たことのない不特定多数を助けるより、家族を助けるほうが先です。
女には子供を産み育てるという本能的使命がある
女には子供を産み育てるという本能的使命があるので、自分と子供のことを最優先に考えるのはごく自然のことなのです。それがなければ人類は滅びるのです。
「流れる星は生きている」の中には、他にも藤原ていさんの独特の感性が散りばめられており、新鮮な気づきをたくさん頂くことができます。
ぜひこの機会にお読みください。コロナ禍の生活のヒントにもなるし、人生観にプラスの影響を与えてくれること間違いなしです。
ごきげんよう。
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著者かぶとたいぞう拝。
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