かぶとたいぞうです。
投資に対する収益率のことを「利回り」と言います。本来は債券元本に対する利子の率や、株式投資額に対する配当金の率を意味しますが、不動産の収益率なども「利回り」と言う人がいます。
今日は、それぞれの本当の「利回り」について考えたいと思います。
株式投資、債券投資の正しい利回り計算方法
普通「利回り」は1年間の収益率を言います。
預金や債券の「利回り」は一番簡単です。預金や債券は元本が固定ですから、利子率がそのまま利回りになります。債券の場合は利子から手数料を引きます。
普通預金の利率が年0.001%ならば、利回りはそのまま0.001%です。米国債の利回りが手数料を引いた後年2.5%ならば、利回りはそのまま2.5%です。分かりやすいです。しかも、利回りはずっと固定です。持ち続けると満期まで変わりません。
米国債を途中で売ったなら、買った時と売った時の差額から手数料を引いた純利益を保有期間で割って利息に加算します。
例えば100万円で買った米国債をちょうど1年後に102万円で売って手数料が2千円だったなら、売買益2万円-2千円=1万8千円(1.8%)+年利2.5%で、結果的に4.3%の利回りになります。
ただし、債券は値が上がるときもあれば下がるときもあるので予測できません。上記の例では、結果的に4.3%になっただけで、4.3%の利回りを期待できるということにはなりません。
株の場合はいろいろな考え方がありますが、米国株長期投資の神様で、バフェットの師匠であるベンジャミン・グレアム氏は次のように定義しています。
「株投資の収益率(利回り)は配当率+保有株価の年間上昇率である」と。
つまり、100万円で買った株が105万円に値上がりし、配当が2%付いたなら、利回りは7%と言うことです。
株式の場合も、債券の場合と同じように、上の例では結果的に7%になったと言うだけで、7%の利回りが期待できるというわけではありません。
言うとしたら「過去10年間の平均利回りが年7%だった」のような言い方が正しいです。
債券と株で少し違うのは、債券の利息は固定なのに対し、株の配当は固定ではないことです。1株あたりの配当金は投資した会社の業績に応じて上がることも下がることもあります。
米国債も米国株も単なる例示ですが、実際の率に近い数字です。
どちらも税引き前の利回りを言う場合と、税引き後の利回りを言う場合があります。私は税金もコストと考えていますから、いつも税引き後の利回りを見ています。
不動産投資の「利回り」計算方法の罠
さて、不動産投資の場合は大きく変わります。
土地をただ貸して地代をもらうだけなら、債券投資や株式投資に似ています。
年間の地代+土地の年間値上がり率=利回りとなるでしょう。
しかし、たいていは建物を建てて、家賃などをもらうでしょう。その場合注意しなければならないのは、建物は年々価値が下がるという点です。また、空室が出ると家賃は入りません。思わぬトラブル対応や修繕が必要になることがあります。土地そのものも値下がりする場合があります。
不動産投資をすすめる人は、それらのマイナス項目を故意に除外して「利回り」を提示するので、「アパート経営で利回り20%」など、誇大な宣伝となる場合があります。固定資産税も除外されている場合があります。
また、たいていは税(所得税)引き前の数字を言っていると思います。そのことを指摘すると「それは当たり前です」と答えるでしょう。所得税率は人によって違うので計算が面倒なのです。
しかし、株式や債券が税引き後で、不動産が税引き前なら比較になりません。比較するならどちらかに統一しなければなりません。配当と家賃収入では納税方式も税率も違います。総合課税にした場合の所得税も他の収入の額によって税率が変わりますから、自分の実際の収入で税引き後の利回りを計算して比較するほうが現実的です。
不動産投資が株式投資などと大きく違う点
不動産が債券や株と大きく違うのは次の2点です。
- 不動産には固定資産税がかかるが、債券や株には保有税が無い
- 不動産のうち建物は年数が経てば必ず劣化するが、債券や株は決して劣化しない
よって、不動産投資の利回りと株式投資などの利回りを比較したいなら、建物の平均的価値下落率、(地価の平均的下落率)、不意のトラブルに対応するための充分な保険料、家賃回収などの労役に対する手数料、固定資産税、不動産取得税などをしっかり引いてから利回りを計算する必要があります。そして、さらに、それが税(所得税)引き前の利回りなのか税引き後の利回りなのかも意識しなければなりません。
厳密に計算したら、不動産投資がそれほど「ぼろい儲け」にはならない事が分かると思います。
このように一口に「利回り」と言っても、単純には比較できません。
株式投資の「利回り」も人によって捕らえ方が違う
私の場合は、株を買ったらずっとそのまま保有するつもりです。売ることを前提にしていません。つまり利益は配当しかありません。よって取得費に対する税引き後の配当率のみを「利回り」と捉えています。
つまり、株を買った時の価格から手数料を引いた金額を合計し、その金額(総投資額)に対する年間の税引き後の配当の率のみを「利回り」と呼んでいます。
私の現在の株式投資「利回り」は3.4%です。税金は全て厳密に配当日の為替レートによって円でひいています。税引き後の配当額もその時々の為替レートによって円で計算しています。円で投資して、得た配当を円に換えて使うのなら円ベースで計算するのが現実的です。つまり為替リスクもしっかり加味して現実の「利回り」を計算しているのです。
同じ株式投資でも、7%と言う人もいれば、私のように3%台の数値をいう人もいます。
不動産投資にいたっては「20%を超える利回り」と言う人がいます。
同じ「利回り」でも計算の仕方によってこうも違うのです。「利回り」という言葉を聞いた時には、どういう計算による「利回り」なのか、注意が必要です。
ごきげんよう。
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著者かぶとたいぞう拝。
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