介護保険料の滞納で差し押さえ処分を受けた高齢者2万人超の悲しき実態

かぶとたいぞうです。

昨日(2021年11月15日)、厚生労働省が発表した情報によると、介護保険料を滞納し、市区町村から資産の差し押さえ処分を受けた65歳以上の高齢者は、2019年度で過去最多の2万1578人だったそうです。

2万人を超えるのは初めてですが、これは一昨年の数字ですから、今現在はもっと多いのではないかと思います。



どうして介護保険料の滞納が発生するのか

ところで、介護保険料は現役世代(満40歳以上)なら給料から天引きされるし、年金受給者なら年金から天引きされます。

それなのにどうして滞納が発生するのだろうかと不思議に思いました。それで調べてみて理由が分かりました。

年金受給額が年18万円未満の人は直納

65歳以上が支払う介護保険料は、原則的には公的年金から天引きされますが、年金受給額が年18万円未満の人は自治体に直接納めることになっているのです。

どうしてそんな面倒なことになっているのか分かりませんが、介護保険料は毎年のように値上がりしていますから、年18万円未満の年金から差し引くと、そのうちに足りなくなるからかもしれません。



忘れたり、面倒で放置している人もいる?

天引きされないとなれば、わざわざ銀行などに振り込みに行かなければなりません。忘れたり、面倒で放置している人もいるかもしれません。

しかし、自治体は差し押さえをする前に何回も何回も矢のような催促をします。そして応じなければ、脅かしの督促状を出します。だから単に忘れたり、面倒で放置している人が多いとは思えません。

年金受給額が年18万円未満の人ってどんな人なのか

そもそも年金受給額が年18万円未満の人ってどんな人なのでしょう。自営業、アルバイト勤務、無職などを長く続け、本来は国民年金を自分で払わなければならないのに滞納してきた人が思い浮かびます。ギリギリの生活をしてきた人が多いのではないでしょうか。



会社員と会社員の妻なら年金額が少ないはずはない

会社員を長く続けた人なら厚生年金が給料から強制的に天引きされます。サラリーマンの妻なら働かなくても第3号被保険者として夫の掛け金で自分も年金を支払ったことにされます。

だから、受取り年金額が年18万円未満には絶対になりません。

同じ社長でも

社長でも、株式会社など法人の役員であれば会社員と同じ厚生年金です。

いっぽう、弁護士、税理士を含め、自営業の社長は同じ社長でも国民年金を自分で収めなければならず、意外と滞納者も多いです。

今回の差し押さえ対象者の中にはそんな人も含まれているかもしれません。



でもお金を持っている人なら差し押さえられる前に払っているのでは

年金を払わないぶん貯金をガッチリ溜め込む人もいますが、そういう人なら市区町村から督促状が何回も来たら面倒なので一括で支払うのではないでしょうか。

中には介護保険制度に不満を持って、あるいはどうせ差し押さえまではしないだろうとたかをくくって、最後まで払わずに差し押さえ処分を受けた人もいるかもしれませが、僅かでしょう。

介護保険料も払えないくらい困窮した人なら生活保護を申請すると思います。生活保護を受けている人は何でもただですから、介護保険料も払う必要がありません。

では、いったいどんな人たちが資産の差し押さえを受けたのか

では今回、資産の差し押さえ処分を受けた65歳以上の高齢者とはいったいどんな人たちで、どんな資産を差し押さえられたのか。

想像できるのはいずれも可愛そうな状況です。

若い頃に失敗し、まともな会社に勤務することができず、65歳を過ぎてもアルバイトなどを続け、ギリギリの生活をしている人の虎の子の僅かな貯金。

差し押さえ:kabutotai.net

なにか事情があって仕事はせず、貧乏だけどお金を使わずにどうにか切り詰めた生活をしている人の住み慣れた古家。



厚労省の役人は成果を誇るが

厚労省の担当者は今回の差し押さえ処分の件数を評価して、「自治体が徴収業務に力を入れている結果だ」と成果を誇っているようですが、少し違うように思います。

お金があるのに滞納していた人たちから取り立てたなら、たしかに成果です。

しかし、爪に火を灯すような生活をしていた人たちから生活の糧を取り上げたのなら、私には闇金以上のむごい沙汰に見えます。阿鼻叫喚の地獄絵巻に見えます。

家まで取り上げたか

住んでいた家までは取らないと思いますが、もし家を取られた人がいたら、せっかくお金を使わずに我慢して生活をしていたのに、この機会に生活保護申請になるでしょう。

そうなると生活保護を受ける人が増えて、かえって国の総支出は増えるのです。



介護保険制度の理念

「子供が親の面倒を見ることによって子供の生活が破綻するようなことがあってはならない」

「これからは子供や家族の介護に頼らず、国、自治体、社会全体が一緒になって高齢者の面倒を見る」

「そのためには、現役世代も介護を受ける高齢者も、共に僅かずつ介護保険料を出し合って制度を維持する」

どんどん上がる介護保険料、どんどん下がる介護サービス

介護保険制度が発足した20年くらい前にそんなことを聞かされました。満40歳以上の現役世代も給料から介護保険料を引かれるようになりましたが、私はいいことだと思っていました。

介護保険制度が始まった約20年前と比べ、保険料は毎年のように上がり、自治体によってば当初の数倍になっています。

「僅かな保険料」がだんだん大きくなって、逆に面倒を見てくれるはずの介護機関がどこも足りず、特別養護老人ホームは何年待っても入居待ちで、なかなか入居できません。



介護保険制度に不満を持つ人も

だから「高額の保険料だけ取られて、なんの恩恵も受けられないじゃないか」と、腹を立てている人もいっぱいいると思います。

そんな中、介護保険料を滞納する人が増え、自治体はむごい取り立てをし、厚生労働省の役人は手を叩いて喜ぶのです。

なんか悲しい話です。

日本社会の構造的な問題

だけど世の中は不景気で、税収は衰え、年寄りは増えるいっぽう、子供は減るいっぽう。

年金から天引きされる介護保険料がますます増え、実質年金は減り、購買も衰え、更に不景気になります。

だから歳をとっても働き続けるしかないのでしょうが、景気が悪いのだから給料は安いし、引かれるものばっかり増えるのです。



悪循環を断つには

この悪循環を断つには、子供を増やすしかありません。「急がば回れ」で、20年後の現役世代を今から育てるのです。

そのような長期的な国策を考えるのは若いリーダーです。年寄りが出しゃばっているうちは、この国の未来はないと思います。

ごきげんよう。


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