かぶとたいぞうです。
yutubeでアカペラグループのきれいな歌声を聞いていて、ふと遠い昔の情景が目に浮かんできました。
それはまだ私が幼稚園か小学校の1年生くらいの頃の体験です。私の原風景とも言える懐かしい光景です。
札幌市東区北11条
私が通っていた幼稚園は天使幼稚園と言って、札幌市東区北11条にあったカトリック系の幼稚園でした。天使病院という病院を運営している団体の経営でした。
我が家は北大(北海道大学)に近く、北大の付近にもよく遊びに行きました。
北大前にあった歌声喫茶
ある日、北大の近くを歩いていると、大勢の人が歌っている声が聞こえてきました。
どうもある店から聞こえてくるようです。その店に近づくにつれ歌声はだんだん大きくなっていきます。
男の人の声、女の人の声。ときどきひとりで歌うきれいな女の人の声。
店の入り口に着くと、店の扉は開いていました。店の中には学生たちがいっぱいいて、みんなで歌っているのです。それがとても上手なのです。
ギター、アコーデオン、そして真ん中にはひときわ済んだ声で歌うおねえさん。
幼い私は入り口に呆然と立って見ていた
歌のおねえさんはドアの前で呆然としている私を見つけてニコニコしながら手招きをしています。
「さあ、坊やも中に入って一緒に歌いましょう」
学生たちがみんな私に注目しました。そしてみんなニコニコしながら私に手招きをしています。
みんなで歌っているところにとつぜん現れた珍客をみんなで面白がっているようです。
どうしていいのか分からなくて、つっ立ていた私
私は恥ずかしくなり、どうしていいのか分からなくなりました。呆然と立ったままでした。
歌のお姉さんは時々ソロパートを歌い、みんなに続いて歌うよう促します。私にも歌うよう目配せします。
おねえさんは歌いながら私に近づいてきました。私に微笑みかけながら少しずつ少しずつ。
美しいおねえさんの声に魅了された私
おねえさんの歌声はとても力強く、それでいて驚くほど澄んだ声でした。私の長い人生の中で、この時ほどきれいな歌声を他に聞いたことは未だに一度もありません。
よく「しびれる」とか「鳥肌が立つ」という言葉を耳にしますが、その時の私は実際に体がしびれるような、寒気がするような、体中に電気が走ったかのようにピリピリとした感じがしました。生まれて初めての体験でした。
心なしか、おねえさんがキラキラ耀いて見えました。
恥ずかしくなって店を出てしまった私
私はどういうわけか照れてしまい、恥ずかしくて涙が出そうになりました。それと子ども心に「お金も払わずにここにいていいのか」という気持ちもありました。
私は後ずさりし、そのまま店の外に出てしまいました。
一目散で家へ戻り、母に興奮気味に一部始終を話しました。
母の反応
「歌声喫茶だね。でも、もうそんなところへ行ったらだめだよ」
母は意外にも否定的な反応でした。それが気に入らなくて私は母に聞きました。
「どうしてだめなの」
母は言いました。
「危ないからね。それにあそこは大人が行くところだから」
歌声喫茶が危ない?
危ないという意味は、それからしばらくして分かりました。北大が学生運動で炎上したのです。歌声喫茶はヘルメット学生のたまり場でした。
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しばらくしてその店に行ったときには、もうその店はありませんでした。
あの時のおねえさんほど輝いている歌い手を見たことがない
その後「スター誕生」などのテレビ番組からたくさんのスターが誕生しました。
しかし私は未だにあの時のおねえさんほど輝いている歌い手を見たことがありません。
あのおねえさんは今頃どこで何をしているのでしょう。
ごきげんよう。
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著者かぶとたいぞう拝。
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