かぶとたいぞうです。
米国と英国の8月14日の債券市場で逆イールド現象が起こりました。2年債の利回りが10年債の利回りを超えたのです。
少し前から逆イールド現象を懸念する声がありましたが、今回は10年債と2年債の金利差ではっきりと観測されました。
逆イールド現象とは
普通は長期債の利回りのほうが短期債の利回りより高いのです。
お金を借りるほうも、10年間貸してくれる人と2年で返さなければならない人がいたら、当然10年間貸してくれる人を優先し、少し金利を多めに払うはずです。長期間借りれるほうが安心だからです。
貸すほうも返してくれるまでの期間が長ければ長いほどリスクが大きくなるので、10年間も貸すなら少しぐらい金利をはずんでもらわないと貸しません。
だから定期預金も期間が長いほうが金利が高いのが普通です。
だから長短債券の金利差(長期債の金利ー短期債の金利)は普通はプラスなのです。この長短の金利差がこのたびマイナスに転じたのです。これは普通ではないのです。
この長短債券金利差の逆転現象を「逆イールド現象」と言います。
上のグラフで赤い線は米国の長短金利差の変化を示しています。黒い線は英国の長短金利差です。
10年債と2年債の金利差は少しずつ縮まってきてはいましたが、どうにかプラス圏でした。
それが昨日とうとう米英そろって0(金利差なし)にまで落ち込み、さらに若干マイナスに振れたと言うのです。
この逆イールド現象(逆イールドカーブ)は少し前にも10年債と3ヶ月債などで瞬間的に発生し、リセッション(景気後退)の前触れかとささやかれましたがほどなく解消しました。
今回の逆イールド現象も一時的なものかもしれませんが、市場は早速反応しています。
逆イールド現象はなぜ起こるのか
近い将来、不景気になり市場が混乱して株も商品も土地も何もかもが下がることが懸念されたとします。
何もかもが下がるなら何を持っていれば良いかと言うと現金です。混乱時には現金が一番信用できます。だから近い将来景気後退が起こると思うと、人は現金の保有率を上げます。
現金の中でも特に「リスク回避の円」と言われ、円を買う人が増えます。いま、他の主要通貨に対して円がどんどん上がっているのは逆イールド現象と無関係ではないのです。
現金の次にリスクが低いのは債券です。債券は「借金」の証文です。相手が潰れない限り必ず返してもらえます。特に米国債は米国が相手なのでリスクが低いです。米国が潰れない限り取りっぱくれはありません。
現金・預金はほとんど金利がつきませんが、国債なら金利が付きます。しかも金利は確定しています。
いま、10年償還の米国債があるとします。金利は固定で2%だとします。これが1口100万円で売られています。買えば1年で2万円の金利が確定します。
同じ米国債でも2年ものは金利が固定で1.9%です。同じく1口100万円で売っています。1年間持っていれば1万9千円の金利が確定します。
いっぽう、10年の定期預金の金利は0.5%だとします。100万円預けても1年で5千円にしかなりません。
このような状況の中で、10年ものの国債を買って、2%の利回りを確定したいと思う投資家は多いはずです。不景気が長期化することが予想されるなら、10年間利回りが確定していれば安心です。
かくして10年ものの国債に人気が集まると、10年ものの米国債(既発債)の値段は上がります。1口100万円が110万円になったとしましょう。
金利はもとの100万円に対して2%、2万円で固定ですから、110万円で買うと、2万円の金利は1.818%にしかなりません。2年ものの金利1.9%を下回りました。
それでも10年ものの米国債を買う人はいます。理由は2つあります。
1つはリスクから長期間逃避できるという安心感、もうひとつは、どうせ今後政策金利は(不景気対策で)うんと下がるので、1.818%ならまだ高いほうだという予測が働くからです。
逆イールド現象がリセッション(景気後退)入りの兆候と言われる理由
景気後退を強く懸念する人が多いから前述のような行動が増え、逆イールド現象が起こるのです。景気後退の懸念が外れていたら単なる「取り越し苦労」に終わります。
しかし、懸念どおり景気後退が起きることもあります。逆イールド現象が起こるくらいに長期債券がよく売れているのです。当然、機関投資家、つまりプロも買っています。それなりのデータをもって判断していると思います。
逆イールド現象が起きたからといって必ずしもリセッション(景気後退)入りするとは限りませんが、逆イールド現象から実際にリセッション入りした歴史も確かにあります。
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。
ごきげんよう。
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著者かぶとたいぞう拝。
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