かぶとたいぞうです。
ここパタヤでは最近ホームレスが増えています。
パタヤでは新型コロナ対策で食料品店や薬局以外のほぼすべての営業が禁止されました。
パタヤの広範に及ぶ営業禁止令で失業者が溢れかえっている
パタヤは観光都市ですから、職がなくなった人が大勢出ました。田舎に帰ろうにも都市間封鎖のため帰れません。長距離バスも走っていません。
職を失った人向けの現金支給制度もありますが、証明できるようなきちんとした前職がなく、支給対象からあぶれる人もいるのです。
パタヤの失業者がホームレス化している
そんな人たちは、休業中の食堂(屋根またはテントだけの簡単な作りの建物)や閉店後のコンビニの前などで寝るのです。
私のアパートの真向かいにもコンビニがあります。昨夜はそこにひとりの青年が一夜の宿を求めてやってきました。
午後10時以降に外にいると夜間外出禁止令に反するので、コンビニも午後9時には終了し従業員は慌てて帰ります。
従業員がいなくなったのを見計らって、ホームレスの人がコンビニの前に陣取って寝るのです。
昨夜の青年は身なりのきちんとした人で、紙袋を2つ持っていました。おそらく服や日用品が入っているのでしょう。そしてそれが彼の全財産なのだと思います。
彼はサンダルをきちんと脱いで、2つの紙袋を大事そうに置き、その紙袋のほうを枕元にして横になりました。
きっと仕事で田舎から出てきたのでしょう。職を失って食うや食わずの生活をしているのだと思います。仰向けに寝た彼の腹には肉がまったくついていません。
ウィスキーのハイボールを飲みながらそれを見ていた私
私は彼の行動の一部始終を自分の部屋のバルコニーから見ていました。ウィスキーのハイボールを片手に。
「自分は優雅にハイボールを飲んでいる。彼は腹をすかしている」
何かできないものかと思いました。大勢を助けることは私にはできません。私にもそれほど余裕はないのです。しかし目の前のひとりの青年ぐらいには何かできるはずです。
彼は私の部屋のバルコニーのすぐ下で寝ているのです。これも何かの縁です。
ホームレスの彼に何かあげるものはないか
冷蔵庫の中を見ましたが、あまりいいものがありません。いくらホームレスとは言え、食べかけのものは失礼です。
何かパッケージに入っていて、まだ封を切っていないものがいいです。封を切ったものや蓋の開いているものは貰う方も嫌です。
喉の乾くものもだめです。彼は水や飲み物を持っていないかもしれません。
そう考えているうちにあるものが浮かび上がりました。豆乳です。私の大好きな黒ごま入りの豆乳があったのです。
私も大事に大事に飲んでおり、手付かずの3個入りのパックがあと2パック、計6個あったのです。
豆乳なら栄養価も高いし飲みやすいし喉も乾かないです。
そうと決まれば早く豆乳を彼に渡したいと思いました。彼は横なっているだけでまだ寝ていないはずです。寝てしまう前に渡さなければと思いました。
何ヒモのようなものがないかと部屋を見渡しましたがありません。
私はとっさに豆乳1個をビニール袋でぐるぐる巻にして、ウィスキーが入っていた箱に入れ、彼の足元に放り投げました。
豆乳をホームレスの彼に投げつけた
ウィスキーの箱に入った豆乳は、ちょうど彼の足元に転がり、驚いてこっちを見た青年に飲むようジェスチャーで促すことができました。
青年は箱の中を開けて私に手をふりました。駄目だというような手の振り方でした。彼が取り出したのは潰れて豆乳が流れ出たビニール袋の塊でした。
それでも彼は私の方を向いて両手を合わせてお礼を言うのです。私はいたたまれない気持ちになりました。
彼は自分の紙袋の中からタオルのようなものを取り出し、店の前の床にこぼれた豆乳を一生懸命に拭き始めました。
私は何という失礼なことをしてしまったのか
「私はなんというアホなことをしてしまったのか。少し酔っていたとは言え、もっと他に方法はなかったのか。人を助けるどことか、ただ迷惑をかけたではないか」
「ウィスキーを飲みながらホームレスを見下し、優越感に浸って豆乳を投げつけたのだ。何という失礼なことを。私はどうしようもないやつだ」
そう思いながら私はすでに手付かずの3個パックの豆乳を手に持って、下まで降りていました。アパートの1階の入り口には鍵がかかっていました。それを開けて外に出たら私も夜間外出禁止令違反です。
最初から彼に豆乳を手渡せば良かった
私は迷うことなく鍵を開けて外に出て、彼に謝りました。すると、何と彼も謝るのです。謝るべきは私の方です。
私は豆乳3個入りパックをしっかり彼に手渡して急いで部屋に戻りました。最初から彼に豆乳を手渡せば良かったのです。
部屋に戻ってまたバルコニーに出ました。彼が美味しそうに黒ごま入りの豆乳を飲んでいる姿を見たかったのです。
しかし彼の姿はありませんでした。
でも紙袋は2つともあります。
ほどなく彼が戻ってきました。手に持った豆乳3個入りパックのうち1個がなくなっていました。誰かにあげてきたのでしょう。
豆乳を美味しそうに飲む彼の姿
彼は残った2個のうち1個を開け、美味そうに飲み始めました。私の方を見てまた手を合わせました。私も手を合わせました。
彼は残った1個の豆乳を大事そうに紙袋の中にしまって、また私に挨拶をして寝ました。
私はそのままバルコニーでウィスキーを飲み続けました。
いきなり起き上がった彼
しばらくすると彼は何かを思い出したように急に起き上がり、紙袋にしまった豆乳を取り出してまたどこかに行きました。
戻ってきた彼の手には豆乳はありませんでした。また誰かにあげたのです。
自分も腹をすかしているのに、手に入れたものを人にあげるのです。
少し酒がまわってきたせいか涙が出ました。
私のアパートの筋向かいにもお弁当を無料配布している食堂がある
私のアパートの筋向かいにも、昼間お弁当を無料配布している食堂があります。明日朝起きたらあそこに行って自分のできる範囲内で寄付してこようと思いました。
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タイ人なら信用できます。自分自身も困っているのに人を助けるのですから。きっとたとえ僅かな金額でも多くの人に確実に渡るはずです。そう思って寝ました。
今朝、僅かばかりの現金を寄付してきた
そして今朝起きて筋向かいの食堂に僅かばかりの寄付をしてきました。
自分で豆乳を買ってきて一緒に配ろうとも思いましたが、食堂に集まるボランティアの人たちに任せることにしました。
現金を受け取ったボランティアの女性が、驚いたような顔をして私に何回も両手を合わせましたが、手を合わせたいのは私の方です。
きっと彼女らも職がなく収入もないのにお弁当の無料配布を毎日続けているのです。
私のやっていることは偽善
慈善・善行は人知れず行わなければ本物ではありません。私はこのようにブログで自分のやったことを披露したので、私のやっていることはまったくの偽善です。
それを分かっていてブログに書いたのは、私のブログの影響を受けて真似をしてくれる人がいたら、本当に多くの人の役に立つと思ったからです。私の僅かなお金では足りないような気がするからです。
このブログの読者の中にはタイ在住の人も結構いることを私は知っています。
ほんの僅かなお金でいい
ひとりで大きなお金を寄付する必要はありません。僅かでいいと思います。
バービアで一杯飲んだと思って、あるいはホステスさんにチップをはずんだと思って、その金額を寄付するだけで多くの人が助かるはずです。
日本だと「バカにしているんですか」と言われかねない金額でも、ここパタヤでは、何十人分ものお弁当が作れちゃうのです。
これは今までの罪滅ぼしのチャンスだと思いませんか。
ごきげんよう。
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「カブとタイ」をいつもお読みいただき、まことにありがとうございます。
著者かぶとたいぞう拝。
記事のカテゴリー/タグ情報
初めてコメントさせていただきます。自分はかなりドライな人間で、東南アジア滞在時でも、ホームレスに寄進することは殆どありません。
今回の記事を読み、大好きなタイ、パタヤの人々になにもしてあげられないのがすごく残念です。たいぞうさんと同様毎年冬にパタヤでお世話になっている身として、早く行けるようになり、なにがしかの助けになれる日が早く来ることを願っています。
そして、少しでも
涙が出たね!
日本は恵まれてる。
戦時に人格が問われる。
安い年金者だけど、何か出来ないかな!
かぶとたいぞうです。
皆さんコメントありがとうございます。
そういう気持ちになってくださった人がひとりでもいれば、嬉しいです。私もできる範囲でこれからもがんばります。