かぶとたいぞうです。
今でも時々思い出します。思い出してはゾッとします。今から20年以上も前のことです。
ある冬の寒い日のことでした。当時小学校高学年か中学校に入ったばかりの娘と、小学生の息子を車に乗せて、麻生の駅前にあった「マリオ」という名前のゲーム販売店に行ったのです。その店は今はありません。
プレイステーション用の中古ゲームソフトを買いに行った
子どもたちは2人とも冬休みに入っており、退屈そうなのでゲームを買いに行ったのです。
その店は当時出たばかりのケーム機「プレイステーション」の中古ゲームの品揃えがよく、以前も何回か行ってゲームソフトを買ったことがあります。
店に着くと、「マリオ」の前には他の人の車がとまっていました。私はしかたなく「マリオ」とは道を渡って反対側に自分の車をとめました。買うゲームはだいたい決まっていました。
道路はテカテカに凍っていた
その日は本当に寒く、路面はテカテカに凍っていました。少し遠回りすれば信号のある交差点があったのですが、私は子供ら2人の手をひいて、スケートリンクのように凍った氷の上を歩いて道の反対側に渡ろうとしました。
3人とも滑って転ばないように、下を見ながら慎重に慎重に一歩づつ歩いていました。そして、ちょうど道路の半分くらいまでたどり着いた時です。
いきなり1台の軽自動車が猛スピードで
左の方から軽自動車がものすごいスピードで迫ってきました。
「あっ」ち思った一瞬、運転手と目が合いました。ものすごい形相をした40歳ぐらいのおばさんでした。
その後どうなったのかよく覚えていません。気づくと私は道路に転がっており、娘も息子も散り散りに路上に転がっていました。
散り散りに路上に転がっていた子供たち
2人の子供にかけ寄ろうとしましたが、滑って立てません。どうにか這って、娘のところに行き、「だいじょうぶか」と声をかけました。娘は目を白黒させながら「だいじょうぶ」と答えました。
息子にも声をかけました。息子は「うん、転んだだけ」と答えました。
おばさんが駆け寄ってきた
ホッとしたところに運転手のおばさんが駆け寄ってきました。
「だいじょうぶですか」
「だいじょうぶです」
「ケガはありませんか」
「はい、ありません」
「病院に行きましょうか」
「いいえ、だいじょうぶです」
えらく恐縮して何回も頭を下げるおばさんをかえして、3人はどうにか道の反対側にたどり着きました。
やっと安心した
おばさんを責める気にはなれなかったし、急いでいたのだろうと思ったのです。何よりも子どもたちが無事っだっただけでも良かったと思いました。
そして念のために子供たちの手足を入念にチェックして本当にだいじょうぶだと知り、やっと安心しました。
帰りは信号を渡った
3人は階段を上って「マリオ」に入り、予め決めていたゲームソフトだけ買って、帰りは交差点まで歩いて信号を渡って車にもどりました。
子供の前では、もう2度と横断歩道以外を渡らないと決めました。
その時のことを何回も思い出す
その時のことを、その後何回も何回も思い出しました。思い出したというより、フラッシュ・バックのように、運転していたおばさんの形相とか、子どもたちが散り散りに路上に転がっている映像が浮かぶのです。
そのたびにゾットし、そして死ななくてよかったと安堵するのです。
へんなことを思う
そして時々へんなことを思うのです。
もしかしたらあの時子供たち2人は死んでおり、そのショックと罪悪感から逃れることができずに、私はいまパラレルワールドに生きているのではないかと。
SF的ですが、子どもたちが死んだ世界と、子どもたちが生きている世界があり、いま私は子どもたちが生きているほうの世界に身をおいているだけなのではないかと思うのです。
私も一緒に死んだのかも
あるいはあの時私も一緒に死んでおり、本当は私もいまは生きていないのではないか。生きているという想念と、夢のような空想だけが残っているのではないかと思ったりもするのです。
へんな話ですが、今でもそんなことを時々思います。
それほど、あの時は死ぬかと思ったし、死んでいても不思議ではなかったのです。
でも確かに生きている
だけど、その後子どもたちは2人とも立派に成長し、結婚し、それぞれ子供もできました。私の孫たちです。
つい先日も息子家族が遊びに来て、孫を抱っこしました。ずっしりと重かったです。
みんな間違いなく生きているという実感があります。私も生きているという実感があります。
私が神仏に手を合わせて常に感謝するのは、そのような体験があるからかもしれません。
ごきげんよう。
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著者かぶとたいぞう拝。
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